「6月の白馬岳はいい」
その噂を聞きつけて白馬岳麓に来ました。
本当は白馬岳山荘に泊まる予定でしたが、翌日は大雨の予報へ変わってしまいました。
予報は約5~10mm/hなので、傘がないと家から出れないレベルです。
そんな雨が降る中、日本三大雪渓を降りてくるのは滑落のリスクしかありません。
しかし、白馬岳には登りたい。
そして、登山日は晴れ。
登山欲求を抑えることが出来なかったので、猿倉山荘から白馬岳のピストン登山を計画しました。
約12時間の行程です。
結構攻めた行程だと思います。
なので、無事に下山できる様に色々準備をしました。
ポイントは「ゆっくり登る」「小さく降りる」これにつきます。
これだけでは、なんだかわからないと思います。
これから具体的に説明します。
計画段階で無事に登山をするために考えた事や失敗した事をお伝えします。
また、白馬岳への道の解説や注意点などもお伝えしたいと思います。
あなたの一助になれば幸いです。
【注意】
登山は事前計画が大切です。事故なく楽しく登山をするために、体調面含め必要な登山用品を準備してから登りましょう。
イメージ動画
約9分間の白馬岳の登山動画です。
サクッと白馬岳をイメージしたい方はこちらをご覧下さい。
白馬岳日帰りのすさまじさ
白馬岳は標高2932mです。猿倉登山口は1230mです。
標高差はなんと1700mです。
この標高差はそれなりに身体へ影響を与えます。
お近くの唐松岳は2695mです。ロープウェイを乗り継いで登山口のある八方池山荘の標高は1838m。
標高差は857mです。
同じ白馬村にある山でも文明の利器を使うと標高差を縮める事ができます。
唐松岳は五竜岳や帰不ノ嶮など険しい山々に囲まれているけども、初心者でも登りやすいと言われています。
その理由の一つは標高差の低さにあると思います。
「軽さは正義」と同じように「近さは正義」
では、白馬岳はそんなにも難しい山なのかと言われるとそうでもありません。
山グレーディングでは、体力4(宿泊が適当)、技術C(ミスをすると事故に繋がる)と表記されています。
確かに、日本大雪渓ではアイゼンワークは必要ですし、悪天候時の判断が明暗を分ける山であると思います。
しかし、特別な限られた人しか登れないという山ではありません。
誰でも、適切な登山装備と登山知識を持っていれば登れる山です。
何が問題になるかというと標高差1700mを日帰りで登山をする所に危険性が含まれています。
考えられる危険性は具体的に二つです。
筋肉疲労と高山病です。
単純に考えて標高差1700mを一日で上り下りをしたら、筋肉へ相当なダメージが加わります。
個人的な経験上、一日の山行9時間以上だと筋肉痛が出現します。
今回、予定している山行時間は休憩込みで12時間でした。
筋肉痛のメカニズムは明らかにされていませんが、要因の一つに筋肉がダメージを受けたという事で起こるとされています。
ダメージが起きると乳酸が発生し、乳酸の酸性化により筋力が低下します。
また、筋細胞の損傷そのものでも筋力は低下します。
筋力が低下すれば踏ん張りもきかず、余計な体力を使い、余計疲れるという負のスパイラルが起きます。
高山病は酸素が不足して起こる現象です。
バスやロープウェイ、弾丸登山をする人は標高による酸素飽和度の変化に耐えられず発症すると言われています。
低酸素により、脳の水分量が増えて浮腫みます。それが、頭蓋骨に接触する事で痛みを伴います。
浮腫むメカニズムは低酸素によるストレスが原因です。
最悪、肺も浮腫んで水が溜まると肺水腫を発症し更に息苦しくなり最悪亡くなってしまう恐ろしい病です。
標高差1700mが与える身体へのストレスに加えて、予想外の悪天候があればもっと危険性は高まると考えていました。
そこで、無事に標高差1700mの白馬岳を登り切るための対策を紹介します
標高差1700mを無事に登り切るには「ゆっくり登る」
標高差1700m(累積標高3500m)、コースタイム10時間半です。距離は12.5kmです。
6月だと大雪渓はもちろん、小雪渓にもしっかり雪があります。
なので、約3kmの雪道を歩きながら約1000mの標高を上げていきます。
険しい岩稜帯や岩場がなく、歩きやすい道ではありますが、雪道もそれなりに大変です。
そこで、無事に登りきるために考えた対策は
「ゆっくりのぼる」です。
ゆっくり登る事で乳酸が溜まらずに、筋力の低下を防ぐ事ができます。
安静時では、乳酸はほとんど増えません。それはそうです。
乳酸は酸素が足りないときにエネルギーを産生する時に発生します。
なので、「きつい」「しんどい」と感じるようなある運動強度の閾値を超えると爆発的に増えると言われています。
乳酸が溜まらなければ、筋力は落ちない。
筋力が落ちなければ、疲れない。
疲れなければ、楽しく登れる。
そのためには、ある一定の運動強度を超えない事が大切です。
乳酸値は病院で採血をしなければ測れません。つまり、登山中には測れません。
なので、主観的な感覚で測るしかありません。
主観的な感覚はあながち馬鹿にできません。
客観的指標である乳酸値と主観的指標として用いられている「かなりきつい」「きつい」「ややきつい」「きつく感じる手前」「楽」のランク分けと乳酸値の上昇と相関している事が明らかになりました。
ややきついと主観的に感じていると同時に乳酸値を調べると増加します。
なので、主観的にややきついと観じる手前、楽と観じて人と話ができるペースで歩くと疲れずに登り切る事ができます。
ある70歳代のご夫婦の例で説明します。
旦那さんはサクサク先に登ってしまい、奥さんが後からゆっくりと登っていました。
旦那さんは時折「早くしろ」と奥さんに言っていましたが、奥さんは「はいはい」といいペースを乱しません。
奥さんは山と対話しつつ、他の人と談笑しながら登っていました。
さて、山頂ではどうなっていたでしょうか。
予想の通り、旦那さんはややお疲れモード。奥様は生き生きとおにぎりを召し上がっていました。
つまり、ゆっくり同じペースで、ときおり談笑しながら歩く事が疲れない秘訣です。
と言うことで、私達もきつすぎず、息が切れないペースで登る事を意識しました。
幸いにも、平日で人もいなかったので、自分達のペースで登れました。
結果、山頂まで全く疲れませんでした。
雪渓もある長い道のりを無事に降りるには「小さく降りる」
本当なら、白馬山荘に泊まり、素晴らしい夕焼けや朝焼けを堪能する予定でしたが、雨により断念。
予定通り宿泊も検討しましたが、雨の大雪渓は巨大な滑り台と化していそうです。
さて、下りです。
「下りは楽」というイメージがありますが、下りもしっかり疲れます。
下りで足がガクガクと震えた経験はありませんか。
それは、明らかに筋肉の疲労から来ています。
下りは普段使わない筋肉を使うので、運動不足の人はもちらん日頃から運動をしている人でも筋肉損傷により筋力が低下します。
何故、こんなにも下りは筋肉に損傷するかというと、筋肉の動き以外にも着地衝撃力が関係しています。
着地衝撃力はある地点からある地点へ着地をして踏みつける力です。
登山の下り時の着地衝撃力はジョギングレベルの衝撃が加わっている事が研究でわかっています。
つまり、下山中は歩いているけども、身体はジョギングしています。
それは疲れます。筋肉も疲労をします。
30分ぐらいのジョギングなら耐えられても、6時間を走りきれません。
では、どうすれば着地衝撃力を和らげる事ができるのか。
それは、「小さく歩く」です。
高低差を変えて着地衝撃力の違い研究した文献によると、高低差を小さくすると着地衝撃力も小さくなると出ました。
それはそうでしょうね。
高低差を半分にすると1/2倍まで力を軽減できています。
これに、トレッキングポールを加えると更に着地衝撃力は軽減できます。
なので、下山は小股で歩き、もちろんトレッキングポールを使用しました。
それでも、筋肉痛は起きましたが、使っていなければ次の日動けなかったと思います。
自分の筋力に不安がある人は筋肉損傷を防ぐためにもトレッキングポールは使った方がいいでしょう。
お薦めはシナノのトレッキングポールです。
理由はこちらのブログをご覧下さい。
それ以外にも無事に降りるには「補給」
正直、12時間も歩けば疲れます。
でも、相方は小雪渓以降の下りがかなり辛そうでした。
下りが少しハイペースでした。登りが7時間、下りが4時間ぐらいです。
スタスタ降りたので、恐らく小股では歩けてはいないでしょう。
それにより、着地衝撃力は大きく、筋肉の損傷も起こり筋疲労を起こしたと思います。
その証拠に止まっていると足がガクガクと震え出しました。
ゆっくり登る事もそうですが、ゆっくり降りることも難しいと感じました。
下りは重力に従ってサクサク降りれてしまいます。
そこはぐっとこらえて小さく降りなくてはなりません。
次に、エネルギーと水分不足による疲労もあったと思います。
山の水分量とエネルギー量を簡易計算します。
5×体重×行動時間=水分量&エネルギー量です。
エネルギー量はもっと詳細な計算式があるのですが、割愛します。
理由はこれでも充分目安になるからです。もちろん、雪渓なども考慮し少しプラスに考えました。
今回の山行では水分量は3L、エネルギーは3000Kcalです。
ここで計算ミスがありました。
そのミスは山荘でご飯を食べる予定だったので、行動食を3000Kcalもっていませんでした。
だいたい、2000Kcalしか持っていません。
なので、下山終盤でガス切れが起きたと思われます。
また、相方は水分も1Lぐらいしか飲んでいませんでした。
ウィダインゼリーを飲んでいましたが、水分量は表記されていません。
なので、水分量としてカウントしない方がいいです。
しかし、カウントしてしまったため、軽い脱水が起きていたと思われます。
脱水になれば、少ない血液を身体へ巡らせるためにそれぞれ臓器の仕事量が増えます。
結果、疲れてしまいます。
下山中の疲労は下山のペースを上げた事、炭水化物不足によるエネルギー不足、水分不足による脱水があったと考えます。
必要なカロリーを持って行きたいけども、荷物がかさむと重量も増えると足に負担がかかります。
負担がかかれば疲れます。
なので、高カロリーで軽いあんこがお薦めです。
暑い夏場でもつるっと食べることが出来、冬でも凍らずに美味しく食べることができます。
飲めるようかんアンドゥーは特に美味しいので有名です。
あのTJARで驚異的な早さで優勝した土井陵さんがアンバサダーを務めています。
その他にも多くの有名な登山者の方が愛用しています。
あんこが苦手ではないなら、白馬三山の縦走を考えている方にはぴったりな行動食です。
以上の内容は山本正嘉さん著の「登山と身体の科学」を参考にしています。
とても面白いので登山をする方は是非読んで欲しいです。目からうろこです。
登山ルートの概要
白馬岳は白馬村の猿倉登山口から登ります。
この辺りは、名峰がずらり。
唐松岳や五竜岳なども観る事ができます。
スキー場と登山口入口が併設している所が多く、ロープウェイで標高を上げる事ができるのが特徴かもしれません。
白馬岳のメインは雪渓です。
日本三大雪渓の一つがここ白馬岳です。他は針木岳と剱岳にある雪渓です。
白馬池尻から白馬頂上宿舎までほぼ雪渓です。
夏になれば小雪渓や白馬池尻の雪が溶けて夏道がでますが、6月中旬はほぼ雪です。
6月になっても雪山を楽しめ、山頂近くでは高山植物が咲き、季節の移り変わりを堪能できる山なので登る価値はあります。
標高差1700mを約7kmかけて登ります。
樹林帯は白馬池尻までです。なので、稜線に行く前から眺望が素晴らしく、登山者を楽しませてくれる素晴らしい山です。
では、これから登山道について説明します。
登山ルートの紹介
これから猿倉登山口から白馬岳までの登山道についてご紹介します。
基本的に危ない箇所は少ないです。
ただ、谷底を歩くため落石の危険性、谷から稜線へ登るため滑落のリスクなどがあります。
それをここでイメージができると幸いです。
猿倉登山口から白馬池尻まで
今回の山行は休憩を含めて12時間です。
逆算して下山時刻を考えると、遅くても17時には下山していたい。
できれば、16時は下山していたいと思いました。
なので、猿倉登山口の無料駐車場に深夜2時に到着しました。
夜空には満天の星空で天の河を観る事が出来ました。
これを山の上で観たかったのですが、天気とタイミングが合わず残念です。
朝4時には登山開始していきたいと思っています。
なので、少し休憩です。
車をシエンタに変えてから車中泊が快適です。
床の凸凹が少ないので、布団を一枚敷いたら快眠です。
車中泊用の車への買い換えを考えている方はこちらからどうぞ。
さて、朝になりました。登山開始です。
猿倉登山口の駐車場にはトイレがないので、猿倉荘のトイレをお借りします。
ごく普通のトイレです。
以降、白馬頂上宿舎までトイレはありません。
ここでしっかり用を足しておきましょう。
登山口は山荘の横にあります。
登山口から少し登りがありますが、歩きやすい道です。
始まって5分も経たないので余裕です。
約10分後、車道のようなフラットな道にでます。
ここからしばらく車道を歩くのでとてもいいアップになります。
夏に向けて木々の緑が濃くなっています。
新緑もいいですが、夏の緑も元気をもらえていいですね。
ふと、上を向くと遠く彼方に白馬岳が見えます。
「あんなに遠くへ行かなくてはならないのか」と絶望します。
しかし、意外にもあっという間に到着するので安心してください。
そう。本当にあっという間です。
雪渓もあれば、徒渉もあれば、高山植物もあれば、絶景もあり。
観る景色も注意する事も多いので、飽きずに上まで登れるからだと思います。
進むといつの間にか白馬岳が見えなくなりました。
そのタイミングで登りが始まります。
登山道はよく整備されているため、登りやすいです。
ただ、木道なのでとても滑りやすいです。
朝露で濡れていたら注意しましょう。
登山口から1時間弱で開けた場所に到着しました。
この川を乗り越えるのが一苦労です。
渡った先が雪なので、踏ん張りがききません。
つるっと滑りそうな所をなんとかこらえて登ります。
こういう場面でもトレッキングポールは便利だなと感じます。
今回は水量が少なかったので、渡れましたが、水量が多かったら靴が濡れた可能性があります。
履き替えの靴下は用意した方がいいでしょう。
いつ、川の上の雪が崩れるのかとヒヤヒヤしながら、登ります。
また、雪が太陽の熱で少しずつ溶けているので、つるっと滑りそうです。
アイゼンは不要ですが、慎重に歩いた方が良いでしょう。
素行こうしているうちに白馬池尻に到着です。
「ようこそ大雪渓へ」という看板はまだ雪の中です。
かろうじて見えている白馬池尻避難小屋の屋根付近で休憩兼アイゼン装着の準備をします。
白馬池尻から大雪渓まで
白馬池尻からいよいよ白馬岳のメインストリートである雪渓を歩いて行きます。
6月中旬はもう雪渓というか雪原です。
夏道はまだ雪の中です。
見渡す限り雪と夏に向けて準備を始めている山肌しかありません。
雪質はざら雪ですが、踏み固められているので時に安心して歩く事ができます。
遠見尾根の時はズボ雪で歩くのが大変でしたが、ここは長年の蓄積によるのかそういう雪ではありませんでした。
しかし、クレバスはあります。
先日、クレバスに落ちて頭を負傷し撤退した人もいたそうです。
なので、ピンクテープに沿って歩いていきましょう。
また、ここは谷なので稜線から降り注ぐ風が強いです。
ときおり、風速10s/hぐらいの風が突然吹きます。
その影響で山肌の岩は削られ落石してきます。
登山中も「ガラガラ」と音を立てて石がなんども落ちてきました。
だいたい、登山道までは来ませんが、このようにどでかい岩も落ちてきます。
人の高さほどあり、驚きました。
また、先日大規模な崩落がありあわや登山道が飲み込まれるところでした。
人と比べると大規模さがわかると思います。
このように日常茶飯事に落石が起きているので、ヘルメットを持参する事をおすすめします。
雪により音が吸収され、気付いたときに目の前に岩が来ている事も多いそうです。
山荘の方々は今までの経験を元に、最も安全な道にラインを敷いてくれています。
色々な道を歩いてみたくなる気持ちはわかりますが、安全面からそれは止めておきましょう。
さて、落石の恐怖と戦いながらなんとか登ってきました。
振り返ると、今までの頑張りが報われます。
上を見上げると、雪渓を登っている人を確認できます。
この時期は小雪渓と大雪渓が合体しているため、小雪渓まで一気に登る事ができるようでうが、滑落事故も多いそうです。
アイゼンを脱ぐ手間と滑落のリスク、どちらを取るかはその人の登山スキルによると思います。
私達も雪渓を歩こうかと話していましたが、やはり近づけば近づくほど斜度の高さに驚きます。
そんな時に山荘の方に出会い、ここの雪渓ではなく夏道を歩いた方が良いとアドバイスを頂いたので、夏道を進む事にしました。
このように夏道の手前に矢印がありますので、こちらを進みます。
やっと大雪渓が終り、普通の登山道を歩くことができます。
いったん、アイゼンをしまいましょう。
大雪渓から小雪渓まで
大雪渓が終り小雪渓まで夏道を歩きます。
雪渓も楽しめ、岩場道も楽しめるのでいい山です。
約30分、この道を歩いて行きます。
この道は雪渓の白に、夏に向けて濃くなる緑、雲のコントラストがある青空、高山植物の黄色のお花畑と季節が融合した風景を見ることができます。
今までは雪渓の白が多く、雪山だと思っていましたが、ここに来ると季節が変わりました。
うん。
いいですね。このような景色がある事を知れて嬉しいです。
さて、この夏道をつづら折りに登って行きます。
ここの写真の辺りで登山口から約1000m登りました。登山開始から約4時間経過していました。
やはりあっという間ですね。
花を愛でつつ、後ろを振り返り自分達の頑張りに誇りを感じながら登るとあっという間に小雪渓へ到着します。
この辺りが小雪渓への取り付きです。
アイゼンを再び装着します。
この辺りは浮き石もあるので気を付けて登りましょう。
小雪渓から山頂まで
アイゼンを装着したら、小雪渓を直登します。
小雪渓は大雪渓と比べると斜度がきついです。
上を見上げても先が見えない程の斜度です。
アイゼンを履いてピッケルまたはトレッキングポールを持っていれば、滑落停止はできると思います。
再び上を見ると雪切り道を作って下さる山荘の方の姿がありました。
とりあえずあそこまで行けばその先が見えそうです。頑張って登ります。
ようやく乗り越えると少し遠くに白馬頂上宿舎を捉えました。
まだ大分先ですが、目標が見えると嬉しいですね。
この先は雪渓と夏道に分かれています。
雪渓、雪道でも登る事はできますが、やはり雪道を歩くのは緊張します。
少しでも緊張から解放されるために、私達は夏道から進む事にしました。
このまま雪道を進む道と右の夏道へ合流する二パターンで登れます。
アイゼンを脱ぎ、夏道に上陸しました。
この道も緑と岩と花と気持ちのいい道が続いています。
ただ、進むと雪道に合流してしまいました。
どうやら3箇所ほど雪のトラバースがあるそうです。
アイゼンを履くほどではないので、このままアイゼンを着けずに登ります。
トラバース道に合流するためにキックステップで登ります。
そこから一つ目のトラバース道を渡ります。
次に二つ目のトラバースを渡ります。
ここから岩場登りが始まります。
今までの道よりも険しく大きく足を上げないと登れない岩もありました。
色々な道を経験できていいですね。
岩場を乗り越えると最後の雪道トラバースを渡ります。
これ以降雪渓はありません。
なので、安心して歩けます。
最後の雪道を歩ききると、様々な花たちが私達を出迎えてくれました。
さすが、花の百名山。
花の種類も数も多いですね。
山の夏は短いです。
その短い期間に合わせて花を咲かせる高山植物に儚さを感じます。
だからこそ、このように咲き乱れている姿に心が動かされるのでしょうか。
小さいのに、下界の大きな花に負けない美しさがありました。
時刻は10時半です。山頂に12時着がタイムリミットなので余裕で到着できます。
早く稜線に出たいので、白馬頂上宿舎には寄らずに白馬山荘を目指します。
白馬頂上宿舎から少し登るとすぐ稜線です。
稜線からは白馬三山である杓子岳、白馬鑓ヶ岳、そして唐松岳や五竜岳へ続く稜線が伸びています。
奥には槍ヶ岳や他の北アルプスの名峰がずらっと並んでいます。
遮る物がなくこの絶景を観られるのは登った者だけのご褒美でしょう。
北アルプスの底力を感じる事ができました。
一方、白馬岳の方面を観るとまるで絵画のような景色が広がっています。
奥には猛々しい白馬岳が聳え立ち、それを守るかのように白馬山荘がたっています。
城下町にでもいるかのような、これからお城に登る旅人のような、そんな気持ちになりました。
また、誰もいない山頂へ続く道を歩くが何よりも気持ちが良かったです。
北アルプスは目の前の景色も良し、振り返った景色も良しで先に進めません。
嬉しい悲鳴です。
白馬山荘に到着しました。
ここで休憩をさせて頂きます。
ここから北アルプスの夕景や朝焼けを観る予定だったのに残念です。
さぞ絶景でしょう。
白馬山荘に宿泊予定の方はこちらのHPをご覧下さい。
ウェブ予約もできて便利です。
白馬山荘から約15分で山頂です。
あと少しと腰を上げますが、中々ギアがあがりません。
休憩後はなんだかギアが入るまで時間がかかるのは何故でしょうか。
つづら折りの道で楽なはずなのに、ペースがあがりません。
ザレ場という事もあるのでしょうか。
ひーひー言いながらもなんとか山頂に到着しました。
約7時間で山頂に到着しました。
無事に到着できてよかったです。一時は登頂も諦めましたが、頑張ってよかったです。
さて、山頂から少し山荘寄りに言った場所に3槍が観られるPOINTがあります。
3槍とは白馬鑓ヶ岳、鹿島槍、槍ヶ岳の事です。
その3槍が揃った写真がこちらです。
どこまでも続く稜線が登山欲を更にかき立ててくれます。
いつか、白馬三山やそれよりも先に歩いて行ってみたい。
その道のりが険しくてもとても良い経験になるのだろうと思います。
それには体力とUL化が必要なので、少しずつ準備を進めます。
さて、観たい景色も観たし帰りましょう。
恐怖の下山
白馬頂上宿舎まで降りてきてきました。
そこで問題が発生しました。
行動食が底をつきそうです。
それもそのはずで、本来は山小屋でご飯を食べて下山しようと考えていました。
しかし、食べていたら下山時刻が遅くなるため寄らずに変える事にしました。
山小屋に寄らない場合の行動食を準備していませんでした。
今は疲労感はありつつ、意識はしっかりしており、身体が動かない事はありません。
とりあえず、下山しないと食べ物もないので降りる事にしました。
小雪渓あたりまで降りてきました。
ここの斜度は急なので、踏ん張るために足の筋肉を酷使してしまいます。
相方はこの辺りから「足が疲れた」と言い始めました。
雪切り道を歩いて夏道に行くようにアドバイスを貰いました。
雪切り道を渡りましたが、その先の夏道がわかりません。
私達が登ってきた夏道は遙か下にありますが、そこまでの道がありません。
道もわからないので、ピンクテープがある夏道まで下ることにしました。
アイゼンを履かずにキックステップで足場を作りながら下りました。
無事に夏道に上陸しました。
この下りでかなりダメージが足にかかり、少しつま先を上げただけで足がぷるぷるしました。
やばいなと思っていた矢先に相方が岩場に足をひっかけ転倒しました。
あわや、下まで転落するところでしたが、なんとか止まりました。
怪我も軽傷ですみ、自力下山は可能でした。
疲労による転倒でしょう。
要因はハイスピードの下山、キックステップの下り、エネルギーと水分不足と推測します。
とりあえず、休憩を挟み残っている行動食と水分を食べるように促します。
ペースも落とし、ゆっくり降りる事にしました。
今は13時です。今は大雪渓手前なので17時は下山完了すると見込まれるので、安全に降りる事を心がけました。
声かけをしながらなんとか無事に白馬池尻まで下山できました。
本来は宿泊が適当な行程です。
疲労が出ても当然です。しかし、もう少しペースとエネルギー補給を適切に行えば疲労度は軽減できたと思います。
課題が残る山行ではありましたが、大満足な山行でした。
翌日は二人仲良く筋肉痛になりました。
駐車場と温泉
猿倉登山口の無料駐車場があります。
駐車場料金は無料で、約60台ぐらい駐める事ができます。
トイレはありません。
トイレは猿倉荘、白馬頂上宿舎、白馬山荘にしかありません。
途中の避難小屋にもありませんので、トイレ管理は適切に行いましょう。
12時間歩いた後に帰宅する元気はないので、白馬村に宿泊しました。
宿泊した宿は「上屋敷」さんです。
温泉はありませんが、アットホームでまるで田舎のおばあちゃんちに来たかのような安堵感があります。
全て畳の部屋なのでごろ寝ができて、疲れた身体にはとてもよかったです。
縁側のお部屋だったので、窓を開けでぼーっとして過ごしました。
まとめ
白馬岳の日帰りは疲れます。
できれば、宿泊をお薦めしますが、天候の関係などで日帰りを余儀なくされることもあります。
その場合、できる限り安全に下山するために、「ゆっくり登る」「小さく降りる」を意識するだけで疲労を抑える事ができます。
また、行動食や水分を1時間に1回の休憩時に補給するとよいでしょう。
登山は無事に下山してこそ登山です。
怪我をしたら楽しい思い出が台無しになります。
これからも安全登山で山を楽しみましょう。
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