はじめに|雪山に一歩踏み出したい人へ
冬になると、白く染まった山を見て「いつか雪山を歩いてみたい」と思うことがあります。
しかし同時に、
- 冬山は危険なのではないか
- 特別な技術が必要なのではないか
- 装備はどこまで必要なのか
そんな不安もつきまといます。
今回登ったのは八ヶ岳北端に位置する蓼科山(2,531m)。
円錐形の美しい姿から「諏訪富士」とも呼ばれる山です。
厳冬期でありながら登山道は明瞭で、冬山入門として名前が挙がることの多い山でもあります。
実際に歩いてみると、技術的な難しさはほとんどありませんでした。
一方で、山頂では立っているのが辛いほどの強風が吹き、冬山の厳しさもしっかり感じる山行となりました。
この記事では実体験をもとに、
- 厳冬期のコンディション
- 実際の装備選択
- チェーンスパイクとアイゼンの使い分け
- ピッケルが不要だった理由
を詳しく紹介します。
これから冬の蓼科山を考えている方の参考になれば嬉しいです。
【注意】
登山は事前計画が大切です。事故なく楽しく登山をするために、体調面含め必要な登山用品を準備してから登りましょう。
蓼科山の山行概要

- 時期:平日・晴天
- 行動時間:登り約3時間/下り約2時間
- 天候:快晴
- 山頂:強風(立っていることが難しい)
- 樹林帯:ほぼ無風
- 急登:3つの急登を経て山頂へ
平日ということもあり登山者は比較的少なく、静かな山歩きを楽しめました。
スズラン峠園地の駐車場に車を停めました。
ここの駐車場のトイレはとても綺麗なので、登山のハードルが下がってありがたいです。
樹林帯は穏やか、山頂は別世界

登山開始直後から感じたのは、樹林帯の穏やかさでした。
風はほとんどなく、体温が上がるにつれてレイヤリングを調整。
歩き始めはアクティブインサレーションを着ていましたが、第一急登を超えたら暑くて仕方がない。
幸徳平付近まではパタゴニアのベースレイヤーのみで行動できました。
本当にパタゴニアのベースレイヤーやミドルレイヤーは優秀です。
冬山という言葉から想像する厳しさとは対照的に、静かで落ち着いた時間が流れます。
しかし高度を上げるにつれて景色は変化していきました。
森林限界が近づくと空が大きく開け、冬特有の透明な空気に包まれます。

樹林帯を抜けた瞬間、目の前に広がったのは冬特有の八ヶ岳ブルーでした。
真っ白な雪面と深い青空の組み合わせは、何度見ても足を止めてしまいます。
この景色を見るために、また冬山へ来たくなるのだと思います。
急登別の装備判断:私はこう判断した
第一急登は穏やか:チェーンスパイクは不要?

踏み固められた雪では歩きやすく、序盤や第一急登はチェーンスパイクが最適でした。
登りですが、チェーンスパイクのグリップ力でも問題なく登れるほどの斜度でした。
ところどころ岩も出ていたのもチェーンスパイクを選択した理由です。
雪山に登り慣れている方であればチェーンスパイクを装着しなくても歩けるコンディションでした。
むしろこの段階でアイゼンを装着すると、露出した岩に爪が引っかかり、かえって歩きにくく感じる場面もあります。
岩場でのアイゼン歩行に慣れていない場合は、チェーンスパイクの方が安心して進めるでしょう。
第二急登は装備判断の分岐点:チェーンスパイクは必須

第二急登は、第一急登よりも斜度が増し、登りの距離も長くなります。
このあたりからはズボ足で進むのが徐々に厳しく感じられるようになりました。
しかしチェーンスパイクを装着していれば足元は安定し、安心して歩くことができます。改めて、その汎用性の高さを実感しました。
【使用したチェーンスパイクはこちら】
第二急登は標高2,000m付近に位置しており、木々の隙間から南八ヶ岳や南アルプスの山並みを望むことができます。

標高を上げるにつれて視界が少しずつ開け、これから向かう冬の稜線への期待が自然と高まっていきました。
第三急登は斜度強い:辛いと感じたら迷わずアイゼンへチェンジ

第二ピーク付近からは、風の影響を受けて雪質が徐々に変化していきます。
今回、私たちはチェーンスパイクのまま山頂まで行動しましたが、硬い雪面の上に新雪が乗っている状態で、チェーンスパイクのグリップでは足元がやや不安定に感じる場面もありました。
安定性を優先するのであれば、このタイミングでアイゼンへ変更する選択も有効です。
特に山頂直下は、よじ登るように感じるほど斜度が増すため、雪山に不慣れな方は苦労する可能性があります。

荷物が増えてしまいますが、雪山では最悪の状況を想定して装備を準備することが重要です。そのため、アイゼンは携行しておくことをおすすめします。
【今回持参したアイゼン】
ピッケルは必要?実際に感じた結論

今回のコンディションではピッケルは不要でした。
理由はシンプルです。
蓼科山の登山道には、
- 長い急斜面
- 滑落停止技術を必要とする地形
がほとんど存在しないためです。
強いて言えば、山頂直下の蓼科ヒュッテへ向かう道の一部は滑落のリスクがあります。

しかし、ストックがあればこと足ります。
ピッケルを持参する指標は以下を参考にします。
1.森林限界以上:積雪が多い可能性があるため
2.雪面凍結:ストックだと刺さらない可能性があるため
3.急斜面:ストックの長さが邪魔になる可能性があるため
具体的にイメージできない場合はこちらのブログを参考にしてください。
ピッケルを持参する山をイメージすることができます。
山頂直下|風と雪が作る冬山らしさ

標高約2,400m付近から気温が明らかに低下しました。
ここで初めてアクティブインサレーションを着用。山頂直下では風を通さないレインウェアを着用しました。
雪煙が渦巻いて私たちに襲ってきます。
この雪が登山道を覆い尽くし、トレースをあっという間に消し去ってしまいます。
山頂に近づくにつれ風は強まり、吹き溜まりでは膝近くまで沈み込みます。
同行者は踏み抜きをして、体半分が雪の中に埋もれてしまいました。

ストックがあってもバランスをとることが難しいのが雪道です。
それに加えて、突風が吹くと容易にバランスを崩してしまいます。
荷物になりますが、安全に登山を楽しむために、ストックを使用することをお勧めします。
【使用したストックはこちら】
山頂|絶景と爆風の蓼科山

山頂に到着すると、状況は一変します。
立っているのが辛いほどの強風。
しかし空には雲一つありませんでした。
視界の先には、
- 八ヶ岳連峰
- 南アルプス
- 中央アルプス
- 北アルプス
冬の澄んだ空気だからこそ見える大パノラマが広がっていました。
本来は山頂でカップラーメンを食べる予定でしたが、寒さのため断念。
あの状況で山頂に滞在するには、手袋をグローブに変えて、ダウンを着用しないと低体温症や凍傷になっていたでしょう。
晴れているから大丈夫ではないと改めて感じました。
ブラックダイヤモンドのグローブは-55度まで耐えられるので、どのような状況でも安心感があります。
雪山には常に持参するようにしているギアの一つです。
少し下った岩場へ避難して休憩を取りました。
保温ボトルのお湯は湯気が立つほど熱く、十分にラーメンを作れる温度を保っていました。
頑張ったあとのカップラーメンは格別です。

ダウンを着ることで止まって休憩することができます。
太陽に暖められたダウンが私たちをポカポカと優しく暖めてくれました。
ずっとここにいられる。それぐらい心地のいい時間が流れていました。
どのダウンを買えばいいか悩んでいる方はこちらをご覧ください。
雪山の下山は驚くほど早い

下山は約2時間。
雪面がクッションとなり、夏山よりもスムーズに下降できました。
「雪山の下りは早い」
実際に歩くと、その意味がよく分かります。
しかし、あまり調子に乗るとスピードをコントロールできずに転倒します。
また、スピードに見合う筋力がないと簡単に膝を痛めます。
下山も自然を楽しみながら、ゆっくり降りましょう。

今回の装備まとめ:実際に役立った登山ギア
雪山入門の山として知られている蓼科山ですが、雪山は雪山です。
晴れていても突然吹雪になることもあります。
想像以上に風が強い可能性があります。
以下の装備を参考にしてください。
必須と感じた装備
- チェーンスパイク:手軽にグリップ力を手に入れられます
- アイゼン:グリップ不足の時に重宝します
- ストック:下肢の筋力を補ってくれます
- 防風シェル:低体温からあなたを守ります
- ダウンジャケット:身体を保温できます
- 防寒グローブ:凍傷を防ぐことができます
- 保温ボトル:美味しいカップラーメンを食べることができます
【今回使用装備まとめ一覧】
| ザック | オスプレー タロンベロシティ30 | 日帰り、夏の小屋泊は30Lで十分です。 | |
| パンツ | ノースフェイス ビックウォールパンツ | 適度な厚さで冬でも最適です | |
| ベースレイヤー | ミレー ワッフルウール | ウールが70%のため暖かく、乾きやすいです | |
| 肌着 | ミレー アンダーウェア | 汗を素早く吸収し放散するので、汗冷え予防に最適です | |
| 防寒着 | パタゴニア ナノエアパーカー | 軽くて暖かく、そして汗抜けのいいアクティブインシュレーションです | |
| バラクラバ | ファイントラック メリノスピン | 呼吸がしやすいです | |
| 手袋(行動時) | ノースフェイス グローブ | これで寒かったら、インナー手袋も追加しましょう。 | |
| 手袋(インナー) | スマートウール メリノグローブ | 薄く暖かいので、重ね着がしやすいです | |
| 手袋(防水防寒) | Black Diamond ソロイスト | ピッケルを使う時は必携品 | |
| 部屋着(ズボン) | Black Diamond ノーションパンツ | さらっと履けるリラックスパンツ。行動着が汚れてもこれを履いて下山できます。 | |
| 部屋着(ベースレイヤー) | アイスブレーカー 200 オアシス LS クルー | 冬は極寒なのでメリノウールがおすすめ | |
| 部屋着(ダウン) | パタゴニア ダウンセーターフーディ | 寒い夜でも暖かく過ごせます。 | |
| レインウェア | ノースフェイス クライムライトジャケット | 耐水圧はもちろん軽くて動きやすいです。 | |
| 靴下(厚手) | スマートウール マキシマムクッション | 暖かく履き心地がよいです。 | |
| 登山靴 | スポルティバ ネパールキューブGTX | ずっと雪道を歩いても指先が冷たくないです。 | |
| チェーンスパイク | スノーライン チェーンスパイク | ちょっとグリップ力が欲しい時に便利です | |
| アイゼン | グリベル アイゼン | 以前よりワンタッチで履きやすくなりました。 | |
| ストック | シナノ トレッキング ポール ロングトレイル | 軽くて長さを調整しやすいです。岩稜以外に必携品です。 | |
| ゴーグル | アックス ゴーグル | 雪の凹凸も認識しやすいです。 | |
| ヘッドライト | ペツル ACTIK アクティック | 広範囲を照らします。 | |
| 保温ボトル | サーモス 山専用ボトル | お昼にカップラーメンを食べることができます。 | |
| ファーストエイドグッズ | Kozy More 救急セット | 網羅されている応急セットです。 | |
| 日焼け止め | スキンアクア 日焼け止め | 雪からの照り返しもあるので必携品です。 |
初めての冬山が不安な方へ

装備判断や天候判断に不安がある場合は、ガイドツアーも良い選択です。
同ルートでもガイド同行の登山者を多く見かけました。
【蓼科山・冬山ガイドツアーを見る】
【Q&A】厳冬期の蓼科山でよくある質問
Q. 初心者でも登れますか?
天候が安定していれば冬山・雪山入門として適しています。ただし装備と防寒は必須です。
Q. アイゼンは必要?
雪山に慣れていない方は第二急登以降の装着を推奨します。
Q. ピッケルは必要?
基本不要。ただし慎重な歩行は必要です。ストックがあると安心です。
Q. 一番大変だったことは?
技術より「風と寒さ」でした。風は一気に体温を奪っていきます。
Q. 気温対策で重要なものは?
まずは防風。シェルの有無で快適性が大きく変わります。その後、保温目的でダウンを着ましょう。
まとめ|厳冬期の蓼科山は“雪山の入口”
厳冬期の蓼科山は、
- 技術的難易度は高くない
- しかし雪山の環境はしっかり体験できる
そんな絶妙なバランスの山でした。
樹林帯の静けさ。
森林限界を越えた瞬間の世界の広がり。
そして山頂の圧倒的な風。
雪山の魅力と厳しさを、無理なく学べる一座だと思います。
これから雪山に挑戦したい人にとって、
最初の一歩としてちょうどいい山。
それが厳冬期の蓼科山でした。


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